事務所や店舗などの事業物件の場合の定期借家契約の利用にあたり、私が今まで利用してきた形態として、定期借家の一番の利用法は、長期契約と賃料の増額契約でしょうか?
事業物件の場合、賃借人の店舗・事務所の開設にあたり苦労するのが、開設時の初期投資の額の大きさが一つの要因と考えられますが、この初期投資を抑えるために、「賃料の減額」のみを主張するテナントもいます。
普通借家の場合、この賃料の逓増・増額についての取り決めは、例え、賃借人本人が納得していても、いざとなれば、「賃借人に著しく不利益」として無効になる恐れがあります。
従って、幾ら普通借家契約締結時に合意していても、無効のリスクを内在することになり、心配が尽きないのではないでしょうか?
定期借家契約はこれを排除することができます。本来、契約締結時に合意していた当たり前のことを当たり前にしてもらえるようになっただけ!と言えばそれまでですが、貸主にとっては大きな一歩です。
例えば、テナントと事務所・店舗等の定期借家賃貸借契約を10年契約で結ぶとします。
その際、初期出店費用のコストを抑えたいテナントには、入居1年目の賃料を、契約基本賃料(本来なら募集賃料)の70%程度で契約し、毎年、5〜10%ずつ上昇すると言う内容にします。10年目には契約基本賃料の130%程度として、定期借家契約期間10年間の総賃料額を契約基本賃料の10年分となるよう設定すると言うやり方です。
これであれば、初期費用を抑えたいテナント側と長期間に渡り優良な入居者を確保したい貸主側の思惑が一致します。
10年後の再契約の際は、賃料を契約基本賃料に戻すか、募集・入居時に合意した契約基本賃料に物価上昇率を掛けると言う方法もあります。また、その際の固定資産税評価額を使っても良いでしょう。
そこまで明記して10年後の再契約!
安定した賃料収入と優良テナントの確保、この命題をクリアーできると思います。
もう一つは、このような定期借家契約の場合、貸主・大家さんの更なるリスクヘッジのために定期借家契約期間中の中途解約条項をきちんと確認しておきます。
それは、期間中途の解約の場合、保証金又は敷金から、差し引く金額を大きくしておくと言うことです。
期間中の解約時期に応じて、保証金・敷金で回収が計れるならば、貸主サイドも安心して賃貸借することが出来ます。
このような定期借家契約による店舗・事務所等の出店のケースをいくつかやりました。
個人的には、「テナント援助型」とか「出店援助型」と勝手に呼んでいます。
定期借家契約が期間満了により終了することのリスクをテナント側は心配しますので、そのようなケースにおいては、「再契約前提型」をプラスして、「再契約前提型テント援助方式の定期借家契約」と勝手に呼んでいます。
この様にしておけば、貸主・借主のバランスと定期借家契約と言った両者のメリットを享受することができるのではないでしょうか?
入居時にテナントから賃料の値下げ交渉を受け入れざるを得なかった貸主・大家さんサイドからの逆提案としても、検討すべき内容だと思いますよ。「だったら、こんな方法で契約しませんか・・・?」って!
その位の方が、テナント側も緊張感があって良いのです。
これでようやく、貸主・借主対等の賃貸借契約です!
前述のように定期借家契約には、互いにメリットを出せるやり方・契約方法があると思いますが、その際に注意することは、何と言っても契約条項とその内容について十分な理解と解釈をしてもらうことだと思います。
賃貸借契約は、なんとなく賃料や契約期間等のイメージから、契約方法等が軽視されがちですが、むしろ全く逆です。
賃貸借契約は大変身近であり、誰もが契約当事者に成り得る可能性があるのです。
だからこそ、しっかりと契約締結の舞台を作らなくてはいけません。
ちょこちょことやるようなやり方で契約しないでください。
ようやく、貸主・借主が対等に賃貸借契約できる方法ができたのに、定期借家契約はいまいち普及していないのが現状です。
でも自宅不動産の賃貸借なら定期借家契約を賃借人は受け入れます!
分譲タイプの自宅マンションなら、定期借家でも止むを得ない?ということなら、他の物件と何が違うのでしょうか
定期借家契約の利用方法はもっとあると思います。
しかし、この定期借家契約をするには、不動産業者自体がもっと契約行為に精通する必要もあると考えます。
自分たちの仲介と言う仕事、あるいは管理と言う仕事を高めるためにも・・・